書評:プロフェッショナルを演じる仕事術

献本感謝。

プロフェッショナルを演じる仕事術 (PHPビジネス新書)

プロフェッショナルを演じる仕事術 (PHPビジネス新書)

第1章 取調室でカツ丼を食べる謎
第2章 ストーリーはどこからやってくるか
第3章 プロフェッショナルのスゴさを「見える化」する
第4章 仕事をゲームに変える方法
第5章 「負ける技術」を身につける
第6章 トイレを磨くと儲かるか
第7章 プロフェッショナルからの正しい学び方

大きく2部構成となっている本書のメインテーマは「自分の役をどう演じるか」ということ。第1部では役を演じるために必要不可欠な個々人の「物語」について語られています。また、第2部では「プロフェッショナル」という役を演じるためのノウハウ・テクニックを「行動」「思考」「精神」という3つのフレームワークを用いて、それらを細分化して紹介しています。

仕事の上で、ひいては人生を生きていく上で大切になるのは「物語」。昔の刑事ドラマで、なかなか自白しない犯人に刑事がカツ丼を与えて、両親の話をして感情を引き出し、自白につなげていくワンシーンがあるが、これもひとつの「物語」だと筆者は訴えかけています。

サラリーマンが「会社人間」に陥ってしまうことも、その逆にプロフェッショナルに仕事に徹することができることも、その人にとっての「物語」を通じて「求められる役」を演じられるかにかかっていると説いています。この着眼点は非常に示唆に富むものだと思います。

なぜならそれは、より端的に言えば、スポーツで体を動かすだけで気分がすっきりするのと同じように、身体と心は一体となっているということだからです。自己啓発本やビジネス本を読んでも次の日には何も変わらないままになるいつものパターンではなく、まずは自分が参考になる人を見つけ真似をしてプロフェッショナルを演じてみる、そこから自身の成長につながっていくと筆者は言っています。

本書の第2部でも取り上げられていますが、これはまさに「守破離」なんですね。「学ぶ」の語源が「真似ぶ」であるということは有名な話ですが、尊敬できる師匠や先輩のやり方を徹底的に「守る」こと、その上でそのやり方を「破り」、そして自分のやり方を創りだすことでこれまでのやり方から「離れ」、自立していく。

自分自身の成長を生み出していくために、先人のやり方を一度受け入れ、真似てみる。現代においてはいささか時代遅れとも取れるものではありますが、そこを筆者は強く訴えかけてきます。

たとえば日本マクドナルド創業者の藤田田氏は、ソフトバンク孫正義社長やユニクロを展開するファーストリテイリング柳井正会長などから絶賛される一方で、「金の亡者だ」などと評価する人もたくさんいます。私自身も藤田氏の講演をはじめて聴いたときには、"どぎつい"言葉に、違和感を持って一人でした。
しかし、今あらためてその言葉を振り返ってみると、その時感じた「違和感」こそ、自分自身が乗り越えなければならない壁だったのです。なぜならフツーの人に違和感を感じさせる尖った「何か」こそが、一流を一流にしている本当の理由だからです。
人には誰でも「自分らしく生きたい」という思いがあるために、「違和感」を感じるものを「自分には合わない」と切り捨ててしまいがちですが、あえてそれを一旦受け止めてみる余裕を持てば、そこから新しい世界が見えてくる可能性があります。
(中略)
自分にとっても最も必要で、そして本質的な学びほど、なかなか素直に受け入れる事ができません。そのことに気付かない限り、大切な学びのチャンスを逃してしまうのです。

これまでのビジネス本とは一線を画す内容で、転職を考える私にはとてもタイミングのよい、良本でした。