世の中を回すためにバカは必要(良い意味で)

釣りっぽいタイトルですが、最近の仕事でやってきたプロジェクトでこの通りの状況に遭遇したので、ここに書いておきます。

前向きなデスマーチ

つい先日まで携わっていた仕事はシステムのカスタマイズ開発・短納期・開発工数ギリギリのプロジェクトで、メンバにはかなりの多忙を強いる状況が続いていました。いちばん忙しいときで毎日朝9時から終電まで、早くても夜10時くらいまで仕事をやってる状況でした。

このような多忙な日々が続くと、やはり精神的に参る人もチラホラ出てくるのが常なのですが(他のプロジェクトでは数名出てた)、今回のプロジェクトではそのような人は出てこず、むしろ、この忙しさを楽しむ状況がなぜか形成されていました。(当時僕はこの状態を「前向きなデスマーチ」と呼んでいた)

この不思議な状況がなぜ生まれたかを考えていくと、どうもプロジェクトメンバのひとりの明るさがプロジェクト全体に波及していることが見えてきました。

さほど仕事ができるわけでもないメンバの存在意義

そのメンバは後輩にあたるんですが、技術的スキルがあまり身についていなかったため、僕は彼の相談に乗りながら「もっと勉強しなきゃ」「ちゃんと覚えようよ」と相手の不勉強をネタにすることが多々ありました。それでもなかなか勉強してくれずプロジェクトとしては少し困った存在だったのですが、ただ誰からも好かれるような明るい性格の持ち主で、仕事とは関係ない話を適当に振るとたいてい面白おかしく切り返してくれて、よく言えばムードメーカー、悪く言えばただのバカだったわけです。

そんな彼とコミュニケーションを深めていく内に、どうもその後輩は「いかに楽しく仕事をするか」ということを常に考えながら仕事していることがわかってきました。と同時に、後輩に対して「バカだなー」と罵りながらも心のどこかで彼からの笑いを期待している自分がいることに気付きました。

そのあたりから、緊張感のある切羽詰まった状況下において、「笑い」や「前向き」な感情を与えてくれる人がいることによって、たとえ状況が打破できていない状態であったとしても、みんなの気持ちが後ろ向きにならず、自然と意欲的に作業に打ち込める環境が出来上がるんじゃないか、と思うようになってきました。

周りの雰囲気を明るくしてくれるバカ=才能

この「バカ」というニュアンスはなかなか言葉では伝わりにくいと思うのですが、つい先日「水曜どうでしょう」を見ていたときに大泉洋を見て「あ、これだ!」と思わず声をあげてしまいました。(ファンの方、本当に申し訳ありません)

あのどこか頼りない感じ。
リーダーシップを発揮するわけでもなく、不甲斐ないディレクター(≒プロジェクトリーダー)に愚痴をこぼしながらも、随所でボケをかましては周囲を笑わせ、時折天然ボケも交えながらも、いつのまにか次のボケを期待している出演者や視聴者(≒プロジェクトメンバ)がいる、あの独特な親近感と期待感を持った人。

このニュアンス、なんという言葉で表せばいいんでしょうか?

正確な言葉が思い当たりませんが、ああいう「笑い」によって周囲を和ませる、周囲を沸かせる人が組織の中にいることで組織全体の動きがよくなる、という今までにない体験をして、「笑い」の持つパワーを改めて痛感した次第。だからといって、決して狙って出来るものではないので、あのニュアンスの「バカ」はひとつの才能と言っていいのだと思います。(皮肉ではなく、本当にそう思う)

以前「バカでも年収1000万円」という書籍が話題になっていましたが、そのあたりにも関連する話かもしれません。

【バカでも年収1000万円稼ぐ6大奥義(1)】「成功の糸は毎週木曜日に降りてくる」 | バカリーマンでも年収1000万円稼ぐ6大奥義 | ダイヤモンド・オンライン

バカでも年収1000万円

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あと、今回のようなプロジェクトに限らず、仕事において能力のある人だけを集められる人的余裕があるなら問題ないですが、能力に差がある人達が集まったとしてもその人達の持つ特性や個々の性格をきちんと見極めた上で適切なポジションに置くことで、組織として想定以上のパフォーマンスを発揮できることを思い知りました。適材適所大事。

後日談

このプロジェクトは無事に開発を終え、今お客様の稼働工程に入っています。そして、あのバカ後輩はというと・・・
次のプロジェクトでメインのプログラマーに抜擢、彼の上司には私から後輩の「効用」について報告、結果的に今回のプロジェクトによって彼は会社から表彰されることになりましたとさ。めでたしめでたし?