東京タワー
リリー・フランキー「東京タワー」読了。
未だに売れているらしいこの本を手にしたのはそんな売れ筋だからといった単純な理由ではなく、一昨年夏頃から聴き出したリリーさんのラジオをきっかけに、はじめは聴かず嫌いで音楽だけを楽しんでいたものがいつのまにかリリーさんのトークに聴き入っている自分がいて、リリー・フランキーという男の底知れなさを思い知ったからだ。
その底知れなさというか奥深さというものは、以前、深夜のラジオで話していたことだが、リリーさんは一日にタバコを何十本と吸っていて、その理由が「おれは空気を吸いたくないから」という、これぞリリー・フランキーと象徴する逸話などからも強く感じ取れる。(そんなの自分だけ?)
で、そんなリリーさんの書いた初長編小説がこれ。事前に何の情報も仕入れずにリリーさんの本だから、という理由だけで購入し、一気に読んだ。どうもこの本を語るにあたっては「泣く/泣かない」がひとつのポイントになっているようだが、そんなことはどうでもいい!だって、僕も泣きましたから……みんな泣くだろうこれは!
親への愛情をここまでストレートに書ききったのは、おこづかいをもらっていた小さい頃から、ひとり暮らしを始めても、大人になっても、仕事をしても、自分だけで生活できるようになっても、ずっとずっと言えなかった言葉があるからだ。想いがあるからだ。普段は言えない気恥ずかしい言葉達があるから、この本の最後にある、あの母への語りはそれまでの想いと感情を一緒くたにして、自分の気持ちを自分の言葉で強く強く伝えている。ここには鬼気迫るものが存在する。その気持ちの強さにただ圧倒され、読み手の気持ちが激しく突き動かされる。涙が出る。
そして、心のどこかでひそかに思っていた涙を流すことへのうしろめたさは、何も気にしなくていいのだと思った。涙が出るということは、自分の気持ちにそれだけ誠実である証拠なのだから。この本は単純な「涙の出る感動巨編」などではなくて、読み手の感情を自然に喚起させる、想いと涙に溢れた作品なのだと思う。
- 作者: リリー・フランキー
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2005/06/28
- メディア: 単行本
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